- ✔ 筋肉をつけるには1日に何セットやればいいのか知りたい
- ✔ 自分にとっての最適なセット数を知りたい
- ✔ トレーニングしているのに効果を感じない
筋トレにおいて「セット」とは、同じ種目を休憩を挟まずに連続して行う「ひとまとまり」を指します。
たとえば、スクワットを連続して10回行うとそれを1セットと数え、休憩を挟んで10回を3度繰り返すと3セットになります。
筋トレの効果は負荷(重量)や反復回数だけでなく、何セット行ったかによっても大きく変わります。
そのため、効率よく筋肥大を目指すには、適切なセット数の設定が必要です。
この記事では科学的根拠と実践経験に基づいて、筋肥大に最適なセット数や設定方法をわかりやすく解説します。
この記事を読むことで、自分に合ったセット数がわかり、効率的なトレーニングを今すぐに始められるようになります。
専門的な知識がない初心者でも実践できるように丁寧に説明しているので、ぜひ最後までご覧ください。
もくじ
セット数と筋トレ効果の関係
筋トレで筋肉を大きくするには、筋肉に十分な負荷を与える必要があります。
その負荷の"量"を決める要素の1つが「セット数」です。
セット数が少なすぎると、筋肉への負荷(総負荷量)が不足し、筋肉を成長させることができません。
そのため、効果的な筋肥大を促すためには、セット数を増やし、総負荷量を高める必要があります。
ただし、セット数を増やしすぎると筋肉への負荷が過剰になり、筋肥大を阻害する可能性があります。
つまり、セット数は「少なすぎず、多すぎない」よう、適切に設定することが重要です。
では、具体的にどれくらいのセット数が適切なのか確認しましょう。
筋肥大を最大化するセット数は週あたり10セット以上
筋肥大に最適なセット数の目安として最も参考になるのが、2017年に発表されたSchoenfeldらによるメタアナリシス(複数の研究を統合した分析)です。
このセット数と筋肥大効果の関係について調べた分析によると、週あたりのセット数が増えるほど筋肥大の効果が高まることが示されています。[Schoenfeld et al., 2017]
この分析では、「週あたり5セット未満」「5~9セット」「10セット以上」の3つのグループを比較し、10セット以上のグループでは、他のグループに比べ有意な成長が見られました。

出典:Schoenfeld et al.(2017)より作成
このことから、筋肥大を目的としてトレーニングを行う場合は、週あたり1部位につき10セット前後が1つの目安になります。
実際に、国際ストレングス&コンディショニング協会(IUSCA)は2021年の公式声明にて筋肥大を最大化するためには、週あたり最低10セット前後を推奨しています。[IUSCA, 2021]
ここでいうセット数は、1部位あたりのセット数を指します。胸と背中を鍛える場合、合わせて10セットではなく、それぞれ10セット(合わせて20セット)行います。
セット数が多すぎると効果は頭打ちになる
筋トレは、やればやるほど効果が出るわけではありません。
実際に複数の研究により、ある一定のセット数を超えると筋トレ効果は鈍化し、そこからさらにセット数が増えると効果が低下することが報告されています。
ただし、どの程度のセット数で効果が頭打ちになるかは、遺伝的要因や体力レベルなど個人差に強く影響を受けるため、判断が難しいところです。
Mortonら(2019)のレビューでは、週15セットを超えると筋肥大効果が停滞または低下するとしています。[Morton et al., 2019]
これらの知見から、週あたりのセット数は10セット前後、多くても15セットまでにとどめるのが効果的と考えられます。
ここまでは、週あたりの最適なセット数を確認しました。
では、「1回のトレーニングあたりは何セット行えばいいのか」次の章で解説します。
1回のトレーニングあたり3~5セットが理想的
効率よく筋肥大を進めるには、1回のトレーニングで1部位につき「3~5セット」ずつ、週に2〜4回の頻度で行うのが理想的です。
なぜなら、1回3〜5セットに分けることで、継続しやすくトレーニング効果も最大化できるからです。
それでは、「3~5セット」が理想的となる理由を詳しく解説します。
セット数を分けた方がトレーニングの質を維持できる
筋肥大を狙うには、各セット限界かその少し手前まで追い込むのが基本です。
そのため、セットを重ねるごとに疲労が蓄積し、セットが進むにつれてトレーニングの強度が徐々に低下します。
例えば、10セットを一度に行うと、後半のセットでは前半のセットと比べ、挙上重量や反復回数が大きく減ってしまいます。
一方で、同じ10セットでも、3~4セットずつ複数日に分けて行えば、ほとんどのセットで強度を維持したままトレーニングできます。
その結果、10セットを一度に行うよりも、複数日に分けた方がトレーニング効果を高めやすくなります。
このように、1度にたくさんのセットを行うよりも、セット数を分割した方が、トレーニングの強度を保ちやすく、筋肥大を促すうえで効率的です。
セット数を分けた方が筋トレを継続しやすい
全身を満遍なく鍛えるためには、胸、背中、下半身と少なくとも3種目が必要です。
1日にそれぞれ10セットずつ行うと合計で30セット、ウォーミングアップや休憩、着替えなどの時間も含めると、少なく見積もって2時間はかかります。
筋トレのような高強度の運動を長時間行うのは、体力的・精神的な負担が非常に大きく、トレーニングを継続することへのハードルが高くなります。
「今日はこれから30セットもやらないといけないのか。」と思うだけで、ジムに行くのを躊躇してしまうかもしれません。
特に、仕事で疲れた平日しかトレーニングの時間が取れない人にとっては、セット数が多いメニューは現実的とは言えません。
セット数を分け、1回あたりの時間や疲労感を程々に抑えることは、無理なく筋トレを続けるために大切です。
週2~4回の頻度で合計10セット前後が現実的
これらの理由から、週2~4回の頻度で「1回あたり3~5セット」ずつ、週あたり合計10セット前後を目標にトレーニングすることをおすすめします。
頻度を増やし1回あたりのセット数を少なくすることで、トレーニングの質を維持しつつ、所要時間と疲労を抑えることができます。
例えば、週3回各種目3セットずつ行えば、1回あたりは1時間以内に抑えつつ、筋肥大に必要なトレーニング量を十分に確保できます。
どうしても合計10セットにしたいのであれば、以下の表のように、休日など時間に余裕がある日に4セットずつ行うことで達成が可能です。
「1回あたり3~5セット」を目安に、自分のライフスタイルに合わせて柔軟に調整しましょう。
初心者は週2回、3セットから始めよう
筋トレを始めたばかり、もしくはこれから始める人は、まずは週2回、1部位につき3セットから始めてみましょう。
すでにトレーニング習慣がある人にとって、各種目週あたり10セット以上をこなすことはそれほど難しくありません。
しかし、筋トレに慣れていない人にとっては時間・体力の面で負担が大きく、筋トレが続かなくなるリスクがあります。
そのため、初心者には無理なく続けられて、なおかつ効果を実感しやすいセット数から始めることをおすすめします。
ここからは、初心者が「週2回×3セット」からでいい理由をもう少し解説します。
初心者は少ないセット数でも十分に成長できる
筋トレ初心者は、トレーニングに適応する余地が大きいことから、少ない量のトレーニングでも効果を得やすい傾向があります。
たとえば、ACSM(アメリカスポーツ医学会)やNSCAのガイドラインでも、初心者には全身を週2~3回、各部位を1~3セットのトレーニングを推奨しており、この範囲で十分な効果が得られることが示されています。[ACSM, 2009]
とはいえ、セット数が少なければ得られる効果も限られるのは事実であり、フォームを練習する機会も減ってしまいます。[Schoenfeld et al., 2010]
こうした点から、初心者は週2回、1回のトレーニングでは1種目につき3セット(週あたり6セット)程度から始めることをおすすめします。
これくらいのトレーニング量であれば、時間や体力面の負担も少なく、十分に効果を実感することができるはずです。
結果として、モチベーションを保ちやすく、筋トレの習慣化にもつながります。
セット数はトレーニングに慣れ、余裕が出てきたら少しずつ増やしていきましょう。
では次に、セット数を増やしたいと思ったとき、どんなタイミングで、どのように増やせば良いのか解説します。
セット数を増やすタイミングと増やし方
筋トレの効果を継続させるためには、自分の体力レベルや成長に合わせてセット数を調整する必要があります。
ここでは、セット数を「どう増やすか」「いつ増やすか」の2つのポイントについて解説します。
セット数は少しずつ増やす
セット数は1種目につき必ず1セットずつ増やしましょう。
なぜなら、トレーニングの負荷(重量やセット数など)は、急激ではなく少しずつ高めていく必要があるからです。(これを「漸進性過負荷の原則」と言います。)
一気にセット数を増やすと、急激な負荷の増加に身体が適応できず、疲労が過剰に蓄積し、成長の停滞や怪我を招くリスクが高まります。
また、セットを増やした分だけトレーニング時間も長くなり、筋トレ継続の妨げにもなりえます。
こうした理由から、セット数は急にではなく少しずつ(1セットずつ)増やすことが大切です。
セット数を増やすタイミングの目安
セット数を増やすタイミングは、トレーニングでの成長の停滞を感じた時です。
以下の2つの状況が続いた場合は、セット数を増やすことを検討してみましょう。
セット数を増やすタイミング
- 挙上重量が増えていない
- 反復回数が増えていない
このような停滞は、現在のセット数では成長に必要な負荷が不足していることが原因である可能性があり、セット数を増やすことで停滞を打破できる場合があります。

時間効率も良く、疲労感も抑えることができるため、増やさずそのまま継続しましょう。
それでは、次にセット数を増やす際に気をつけたい注意点について解説します。
セット数を増やす際の注意点
セット数を増やすことは、筋トレの効果を高めるうえで有効な手段ですが、やみくもに増やしてしまうと逆効果になることもわかっています。
また、セット数が多くなるとトレーニング時間も長くなり、時間効率も悪化します。
そのため、セット数は安易に増やすのではなく、成長に必要な分だけ少しずつ増やしていくことが大切です。
この章では、セット数を増やす際の注意点と増やしすぎることによるデメリットについて解説します。
本当にセット数が足りないのか確認する
成長の停滞を感じた場合に、安易にセット数を増やすのは注意が必要です。
なぜなら、停滞の原因はトレーニング量(セット数)の不足だけとは限らないからです。
以下のような要因も、トレーニング量の不足以外の停滞の原因として考えられます。
トレーニング量以外の停滞の原因
- 強度(重量)が適正ではない
- 栄養不足(カロリー、タンパク質不足)
- 睡眠・休養不足
- 頻度不足(トレーニング間隔が空きすぎている)
- フォームの崩れ
これらの問題があると、トレーニング量を増やしたとしても思うような成果を得ることはできません。
むしろ、疲労の蓄積によるパフォーマンスの低下や、オーバートレーニングに陥るリスクを高めます。
そのため、セット数を増やす前に、5つの項目を見直し、必要があれば改善を優先しましょう。
それだけでも、停滞を打破できる可能性があります。
問題点がないにも関わらず停滞が続く場合のみ、セット数を増やすことを検討しましょう。
やりすぎはオーバートレーニングを引き起こす
セット数が多すぎる状況が続くと、回復が追い付かずオーバートレーニングに陥るリスクが高まります。
オーバートレーニングとは、トレーニング量が身体の回復能力を上回ることで生じる慢性的な疲労状態のことです。
オーバートレーニングになると、以下のような症状が現れることがあります。
オーバートレーニングの主な症状
- 筋力の低下
- 疲労感の持続
- 睡眠の質の低下
- 免疫力の低下
こういった症状が長引くことでトレーニングの質が低下し、結果として筋力や筋肉量の減少につながります。
特に30代以降は回復力が落ち、週20セット以下でも栄養や休息が不十分ならオーバートレーニングに陥る可能性があるため、セット数を増やしすぎには注意が必要です。
部位別セット数の目安
筋肉は部位によって大きさや機能が異なるので、満遍なく発達させるためには、それぞれに合ったセット数に調整することが効果的です。
ここでは、大筋群と小筋群に分けて、セット数の目安とその理由を解説します。
大筋群のセット数の目安は10セット
脚、背中、胸といった大筋群は、筋肥大効果を最大化するため週あたり10セットを目安に設定しましょう。
大筋群は体全体の筋肉量の大部分を占めており、これらを優先的に鍛えることで効率的な体づくりが可能です。
種目はベンチプレス、ローイング、スクワットなど以下の図のような「コンパウンド種目(多関節種目)」を中心に行いましょう。
コンパウンド種目は複数の筋肉を同時に刺激でき、初心者でも比較的高負荷でトレーニングすることが可能なので、時間と筋肥大効率に優れます。
小筋群は少なめでOK
肩、上腕や前腕、ふくらはぎなど小筋群は、筋肉そのものが小さいので大筋群ほどのセット数は必要ありません。
加えて、これらの筋肉はローイングやベンチプレスのような「コンパウンド種目」で間接的に刺激されるため、単独で鍛えなくてもある程度の成長が見込めます。
実際、腕のみのトレーニングは行わないボディビルダーも珍しくありません。
あえて小筋群もプラスして鍛える場合は、以下の画像のような種目を週あたり3〜6セット(週1〜2回、1回3セット)からスタートしてみましょう。

まとめ|セット数を調整して効率的に筋肉を成長させよう
今回は、筋肥大効果を最大化するためのセット数について、科学的根拠も踏まえ詳しく解説をしました。
セット数は、筋トレの効果を左右する重要な要素です。
まずは「週あたり10セット前後・1回あたり3〜5セット」を目安に、自分の体力やライフスタイルに合わせて調整してみましょう。
初心者は「週2回、1回あたり3セット」からスタートし、トレーニングに慣れてきたら、少しずつセット数を増やしていくのがおすすめです。
【参考文献】
・Schoenfeld, B. J., Ogborn, D., & Krieger, J. W. (2017). Dose-response relationship between weekly resistance training volume and increases in muscle mass: A systematic review and meta-analysis. *Journal of Sports Sciences, 35*(11), 1073–1082. https://doi.org/10.1080/02640414.2016.1210197
・International University Strength and Conditioning Association. (2021). Resistance Training Recommendations to Maximize Muscle Hypertrophy in an Athletic Population: Position Stand of the IUSCA. International Journal of Strength and Conditioning, 1(1). DOI: 10.47206/ijsc.v1i1.81
・Morton RW, Colquhoun RJ, Hornberger TA, et al. (2019). Training for strength and hypertrophy: an evidence-based approach. Current Opinion in Physiology, 10, 90–95. https://doi.org/10.1016/j.cophys.2019.04.011
・American College of Sports Medicine. (2009). Progression Models in Resistance Training for Healthy Adults. Medicine & Science in Sports & Exercise, 41(3), 687-708. DOI: 10.1249/MSS.0b013e3181915670
・Schoenfeld, B. J., & Williams, M. A. (2010). Dose-response relationship between resistance training volume and muscular hypertrophy: Are current guidelines optimal? The Journal of Strength and Conditioning Research, 24(5), 1277–1280. https://doi.org/10.1519/JSC.0b013e3181d6149f
・Coburn, J. W., & Malek, M. H. (2011). *NSCA’s Essentials of Personal Training* (2nd ed.). Human Kinetics.
(日本語訳監修:森谷敏夫ほか『パーソナルトレーナーのための基礎知識 第2版』NSCA JAPAN)